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2024/05/12 (Sun)
ファランクス(改訂版)

タイトル:『地下水路 (I)補給物資』

オレンジ色のジャムだと……(((((( ;゜Д゜)))))ガクガクブルブル

キーワード:小説 Kanon Air ファランクス第一章改訂版 偽りの月版と展開が少し違います SS 独自世界観 ファンタジー  


※執筆時に城山三郎「神々の翼」を読んでいたので所々似た表現を使っています。


修正履歴
H24.4.28 初掲載
ファランクス

-首都防衛戦-

11. 地下水路

(I)補給物資




 一ノ瀬鴻太朗が用意した主戦場は、ハボナ平原の中でも目に見えない凹凸が激しく、竜の離着陸にはきわめて不適だった。
 あらかじめ地盤を固めた場所を梓隊が利用しているが、正直なところ着陸のたびに地盤沈下が進むので、運用に適していなかった。
 それでも哨戒線を構築するためには無くてはならない場所で、その理由は近くに水路があるためだ。
 侵攻に水路を利用するのは、常に大量の物資を消費しながら行軍するからで、六号街道では物資不足が生じるたびに第一集団の足が止まっていた。

「これは酷い」

 と、呟いて鴻太朗は一通の手紙を机に伏せた。
 手紙の差出人は上司である相沢春仁で、あらかじめ予告された無茶な命令が記されている。
 その命令とは、戦闘開始から十五日間陣地を死守せよ、指定期間内の撤退は許されない、というものだった。
 春仁が明確な期間を提示してきたのだから、首都の陣地化のめどが立ったのだろう。
 そして何より最終目的のための仕上げ段階に移ったということ。
 頭の痛い話だ。
 目的を達するためには首都を、学問の街に屍山血河を気づかねばならぬ。
 月丘の戦略を満たすための手段だ。鴻太朗が知る限り、生きるために国家の自殺などという考えを提唱した、奇妙に人なつっこい男の命令は犠牲者が出ることを織り込み済みであった。
 だいたい相沢春仁は北華出身で、身一つで月丘軍の中枢まで駆け上った。一族は名門水瀬家と姻戚関係を結んでいる、という曰く付きの男。
 鴻太朗はというと、家庭の事情で士官学校を出たが、数学と物理の研究に没頭したいという欲求を捨てきれず北華への留学というチャンスが欲しかった。
努力の成果が実って士官学校を上位の成績で卒業。念願かなって北華に留学した。
そこで出会ったのが相沢春仁をはじめとする英才たち。
 今から思えば変なやつがいた。近衛兵から出向してきた神保という男。
やつの背中には見事の入れ墨(タトゥー)が描かれていた。
辻、なるきわめてアジテーションに優れた男を「マー坊」呼ばわりしたあげくパシリ同然に扱っていた。
 現在の水瀬家当主もいた。
オレンジ色のジャムだと……(((((( ;゜Д゜)))))ガクガクブルブル
 忌まわしい記憶だった。

「だが補給物資はありがたい。今回ので矢弾の心配が無くなったのだからな」

 何しろ五会戦分ある。
 会戦一回につき一万トンの計算だから、地下陣地に約五万トンの軍需物資を運び込んでいたことになる。
 たかだか数千名の兵に対して過剰ではないか、との意見が出たが、鴻太朗はあえて彼らを説得した。
 鴻太朗は今回地下陣地を造営するにあたって、北華に消耗戦を強いるという基本的な考え方を踏襲していた。
 三路湾突入に然り、六号街道の遅滞防御然り。
 三路湾では海軍の一個艦隊分の補助艦艇を犠牲にした。六号街道では航空隊が半減し、すり潰されていった。
 兵力が少ないのは国力差を考えれば当然のこと。
 焦土戦術で戦力差を五分五分にしているが、魔術の効果は消えつつある。
 遅かれ早かれ月丘は自滅する運命だ。
 
「ん?
 何か起きて、いる?」
 
 天井が揺れている。
 地下陣地は地下水路によって形作られた無数の洞穴群を連結したものだ。
 数千名の兵士は、開戦当初からただひたすらハボナ平原の地下にこもって土木工事に従事し続けていた。
 第二集団が彼らの主戦場に到達するのを待っていた。
 六号街道に航空戦力を集中させているのも予測通りの行動。
 時期が来たら作戦計画に従って、数千の兵士が斜面に巧妙に形作ったトーチカから濃密な弾幕射撃を生み出す。
 北華のファランクスに対抗するための戦術。
 歩く戦車には要塞砲撃を持って対抗する。

「火力は力だよ。まったく計算のしがいがある。
 はたして、期間内にこちらの犠牲をどれだけ押さえられるか。
 それが問題だ」

 生きて娘に、ことみに会おう。

「僕は、僕の欲望に従って行動しよう。
 そして、水恵に、ことみと再会しよう」

 伝令が走り込み、声を張り上げる。

「一ノ瀬少将。敵の空爆です!」

 ああ、始まってしまったのだな。

「わかった。伝令ご苦労。
 作戦第二十八号に従って行動せよ」
 
 

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2012/04/28 (Sat) 小説ログ Comment(0)
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