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2024/05/12 (Sun)
T1-1

証言-空のエースたち- アリシア・テスタロッサ 1

キーワード:小説 リリカルなのは 証言 回想 SS 独自世界観 設定捏造 エース


修正履歴
H23.7.24 初掲載
T1-1

「アリシア・テスタロッサ、か。

 懐かしい名前だな。

 六月六日の戦闘詳報をすでに調べているようだからご存じだと思うが、彼女を含むライトニング中隊に邀撃命令を出したのはこの私だ。

 当時、戦局は決定的になりつつあった。

 私たちは後退戦術に転換していたし、それ以外の選択肢が失われていた。

 あのときの北華軍は強大だったよ。私が戦った中でも最強といっていい。

 私たちの士気は旺盛だった。

 能力に決定的な差はあったと思えない。むしろ優れているとさえ考えていた。

 が、勝てない。やはり国力の差だろうな。

 前線にいたときは三倍ぐらいの戦力差は当たり前だった。

 ひどいときは十倍以上の敵を食い止めたものだ。

 あの日、北華の翼竜部隊と海軍航空魔導師隊の空襲を迎え撃つべくライトニング中隊――翼竜三、戦竜二、魔導師一二――は空にあがった。

 彼らを援護するべくなけなしの術法隊も対空戦闘に参加させた。

 敵の数は翼竜や戦竜を含めて約五〇。

 三倍の数だ。

 敵を追い払うだけで精一杯だった。

 どんどん味方が落ちていく。

 でも、アリシアは強かった。

 掛け値なしのエースだ。撃墜数六八の腕前は本物だった。

 彼女の戦い方は、そうだ……あえていえば”リボン付きの死神”と似ていた。

 一撃離脱を徹底していたよ。

 でも、敵にも腕利きがいてね。アリシアは自然とそいつとやり合うことになった。

 結果は、戦闘詳報に書かれているとおりだ。

 アリシアの敗北だった。そのまま彼女は命を落としたよ。

 アリシアたちの犠牲は結局、戦局の趨勢には意味を為すものではなかったな。
 
 そして皆も知っての通り、「霧の丘」で時間稼ぎした私たちは、残された戦力のすべてを使って首都防衛戦に突入した」



『テスタロッサ家の一族 ~ゾレアン=バルテロッサ の証言~ より』





「もうあの空の生き残りは少なくなってしまったな。

 あの酷い戦争をせっかく生き延びたのに『円卓』でずいぶん死んだ。

 『鬼神』や『片羽の妖精』がいなかったらどうなっていたことやら。
 
 もしサイクス氏に会うことがあったらその節は助かった、と伝えておいてくれ。

 ええと、今回は誰のことについて聞きたいんだったっけ。

 テスタロッサ。ふむ、小アリシアのことか? それともライトニング?

 言っておくが風鳩の宛先は知らないぞ?

 でも、落とすならライトニングの方がおすすめだ。

 20代後半になって焦ってる。

 撃墜するなら今だ。

 え? 興味ない? うそ!

 まさか、大きくない方が好みなのか?

 でも、小アリシアはやめておけよ!

 ひどい跳ねっ返りだ。感情の起伏が激しいから乗りこなすのは困難を極めるだろうな。

 私はそんな作戦に参加するのはまっぴらごめんだね。まだ死にたくない(しばらく大笑いをする)

 ふー。こんな姿本人に見られたら殺されるな(苦笑い)

 何かね。小アリシアじゃないなら、大アリシアの方か。

 彼女について私が知ってることは限られてるよ。

 それに祖国を失った戦争についてはかなり時間が経っているから正確な話をすることが難しい。

 それでもいい? あ、いいの?

 わかった。とりとめのない話になってしまうかもしれないが付き合ってくれ。
 
 大アリシア。初めて実物のアリシア・テスタロッサに会ったのは、彼女がまだ学生だった時だ。

 ……って、おーい。相づちを打つところだろ。そこは。

 君、何を震えてるの。

 言ってなかった?

 私が、大アリシアと同じ学校って。調べが足らないな。

 最近の若いもんはなってないね。

 いやさ。年齢が離れているのは彼女が飛び級で入ってきたからであって。

 私、一学年上の先輩なわけ。

 当時成績良かったし。

 これでもハンモックナンバー上位だよ。

 まー上司なぐっちゃって出世街道転落まっしぐらだったけどさ☆

 宇(検閲により削除)だぜ? 人生最初の大失敗だったね。

 あの大アリシアに『先輩』と言わせてたわけ。

 ちっこくてかわいかったねー。

 ちょうど小アリシアが静かにしてる時みたいだったよ。

 学園きっての秀才にして美少女だった。

 明るかったし、年齢なんか気にせずすぐにみんなの輪に溶け込んでいたよ。

 私は頼りになる先輩のポジションを築いていたから時々相談にも乗ってやった。

 就職先の相談を受けたときは驚いたよ。あれだけの容姿だったからいくらでも結婚相手は見つかっただろうに。

 でも、大アリシアは空が好きだった。愛していると言っていい。

 あんな欲張りで向上心の塊はいなかったな。

 普段は図書館で読書する姿が似合う深層のお嬢様風なのに、空を飛んでるときは別人だった。

 心底楽しそうに飛ぶ姿がうらやましかった。

 あんな風に飛ぶやつは『メビウス』に会うまでいなかったよ」

『テスタロッサ家の一族 ~クルト=キタジマ の証言~』


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