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2024/04/28 (Sun)
ファランクス(改訂版)

タイトル:『六号街道制空戦<六・六> (IV)』

火炎流星、よーい。

キーワード:小説 Kanon Air ファランクス第一章改訂版 偽りの月版と展開が少し違います SS 独自世界観 ファンタジー 竜VS竜 でもドッグファイトじゃない 話数分割 書けた分だけアップ 航空戦 いつになったら首都に突入できるのだろう


※執筆時に城山三郎「死の誘導機」を読んでいたので所々似た表現を使っています。


修正履歴
H23.10.15 初掲載


ファランクス

-首都防衛戦-

7. 六号街道制空戦<六・六> (IV)




南方白亜種を含む山側迂回部隊は雲の中を進んでいた。
彼らは魔力封鎖を行っており、悪天候に助けられたこともあって天測所かの通報を免れていた。
雲を抜けて合流地点に今一歩のところで高高度を滞空する『鉄』部隊を目視した。
彼らにしてみれば、そんな場所に敵がいることを想定してはいなかった。
しかも街道側に大規模な煙幕が張られている。
ちょうど、予定通りに行けば航空魔導師隊が通過しているはずの場所だ。
敵の天測所によって発見されたのか、それとも敵哨戒線に引っかかったのか。
どちらであるか。
いや、迂回部隊にとっては憶測を必要としていなかった。
彼らがもっとも気にするべきは、偶然ではあるが、進路上に立ちふさがる『鉄』部隊が邪魔であった。
『Janes Fighting Dragons』によれば、鱗鋼種は小回りが利かず、動きが鈍い。攻撃性も低い。
使役用としては扱いやすいが、軍用には不向きの種だ。
そして軍用として扱っているのは、彼らの知る限り月丘だけだ。
彼らは乗騎である竜の首を滞空する『鉄』部隊へ向けた。
奇襲の前提条件は崩れていた。
危険度が上がり、状況は強襲に変化する。
予定していない戦闘だが、不確定要素が強いことも折り込み済みだ。
これから遭遇戦を行う。
相手が高山種なら逃走をはかるが、鱗鋼種ならば勝算があった。

「全隊に告ぐ。
 予定進路上に、敵種、アイアン。
 これより進路の安全を確保するため敵の掃討を行う。 
 火炎流星の試射後、斉射。
 必要とあらば追尾流星の使用も認める。
 ただし撃墜にこだわるな。
 敵の高度を落とせばこちらの勝利だ」

任務を終えたのか鋼鱗種が反転する。
敵もこちらに気がついたようだ。
目があった気がしたのだ。
しかし、遅い。
竜が口を開ける。

「試射用意!
 て!」

球状の火炎が弾丸となってばく進する。
が、風に流されて遠弾となった。
敵は攻撃から逃れようと翼を翻す。
仮想敵としていた高山種と比べて鈍く、その動作は緩慢に思えた。
竜の口を開け、火炎流星の核となる炎を八個生み出す。

「進路そのまま。
 敵の動きは遅いな。
 照準修正。
 火炎流星、よーい。
 ありったけの弾をたたき込む!
 斉射!」

合計六十四個の火炎流星が発射される。
それぞれの竜は八個の火炎流星を同時に発射するわけではない。
ほんの刹那、重力のくびきから放つ時間をずらしている。
傍目から見れば同時だが、竜の体感では一発ずつ放っていたのである。
赤黒い溶岩と同じ色をした弾丸が高速で回転しながら、前方に弧を描いて飛んでいく。
操竜士は乗騎とする竜が放った火炎流星の弾着までの時間を計る。

「三、二、一。
 弾着今!」

火炎流星が炸裂する。
炸裂の際、行き場を失った運動エネルギーが激しく爆発する。
そのため、一帯に煙が充満したが、高度が高い分風が強く、すぐに視界が開けた。
落とすつもりで火炎流星を撃ち込んだ。
しかし、結果はどうだろう。

「敵、生存!」

「ぴんしゃんしとる。
 こいつは……どんだけ頑丈なんや」

鱗鋼種はバランスを崩して高度を下げつつあった。
火炎流星による飽和攻撃により、数発被弾している様子だ。
実際に鋼色の鱗から煙を引いている。
操竜士が手綱を引いて体勢を整えようとしているのがわかる。
竜の背中の櫓も甲鉄が張り巡らされているがために、ほぼ無傷であった。
さらにいえば、鱗鋼種が持つ耐魔、耐術特性によ効果が減殺されていた。
鱗鋼種がほとんど前線で使われなかったために、その耐久性を疑問視する声もあったが、今、攻撃を行った操竜士たちは攻撃が有効打となりえないことに声を失っていた。



+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×+×



一方、『鉄』部隊。
櫓の上で術法使いがふるえる手で汗を拭う仕草をした。

「操竜士殿!
 フレア間に合ったぞ!」

火炎流星の一斉射撃が行われたとき、彼らは肝を冷やしていた。
鱗鋼種は魔法や術法に対して特に耐久性が高い。
物理攻撃をのぞくほぼすべての攻撃を、その特性により減殺してしまうのだ。
物理攻撃ですら堅く分厚い鱗を貫く必要があり、月丘では『空の要塞』と評価されていた。
が、いくら頑丈であろうとも、乗っている人間までは同じであるとは限らない。
可能な限り生存性を高めた重防護服という存在が示すように、生身の人間が直接攻撃を食らえば簡単に死ぬ。
よって鱗鋼種を殺すのは難しいが、乗員を殺すのは案外たやすい。
月丘では南方白亜種への対策として、フレアによる熱源を作って火炎流星の炸裂タイミングを過早にする、というものがある。
豊富な積載量により、この手の装備だけは事欠かなかった。
乗員が、最初の試射の時点で必死に用意したのだ。
致命的な弾着回避という理想に近い結果が得られたものの、至近距離でやられたら死んでいた、というのが乗員全員の実感だった。
だが、先ほどからしきりに足下がぐらついている。

「高度が保てない!」

操竜士が悲鳴を上げた。
鱗鋼種に損害はない。
しかし、ここにきて、無理をして高度を稼いできたツケがまわってきた。
クイックチャージの効果が切れたのである。
運動性能が低下し、空気抵抗軽減の効果を失った。
鱗鋼種は本来の高度へと落ちていくしかなかった。


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