忍者ブログ
infoseekの本サイト消滅につき旧作品が行方不明に…… 横浜みなとみらいを徘徊する記録
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024/09/20 (Fri)
魔法少女リリカルなのはA's After Story

――Puppet Manipulator――

4. 『skirmish』

 なのはの砲撃を避けたアリスは、追撃するフェイトの攻撃をなぎ払った。
 細身の少女が放ったとは思えない重い一撃にマニピュレーターが軋んでいた。
 フェイトの攻撃はあまりに強烈で、迷いが無い。
 戦闘開始から三十秒が経過しようとしていた。
 それでもアリスの予測では、後二十秒で撃破される。これを凌いでも数秒と保たないだろう。
 穂先に魔力をこめた。
 フェイトが体勢を立て直し、バルディッシュを構えなおした瞬間突きを放ち、フェイトの手を打ち抜く。
 魔法無しの白兵戦ならば手首を吹き飛ばしただろうが、魔法壁が邪魔となった。
 双方の魔力が拮抗し、打ち破るには至らない。
 一瞬の時間差。フェイトには十分だった。
 気合いと共にバルディッシュの袈裟に振りおろす。
 彼女の脳裏には切り裂かれ、爆発するアリスの姿が映っていた。
 にわかに刃先が止まった。
 引手が尋常ではなかった。突きよりも速く、引いたのである。
 鍔迫り合いが始まった。アリスを助けるべくエクゼが急行した。
 そのとき、遥か上空から転送反応がした。位置はなのはの真上。
 なのはは第二射を放つべく、集中し、空宙で足を止めている。
 魔力反応が無い。フェイトは敵の意図に気づいた。
 アリスを突き飛ばし、

「なのは、上っ!」

 間に合わない、と思って力一杯に叫ぶ。
 なのはに伝わるまで一秒も要さなかったが、彼女は避けられるよう願うしかなかった。
 フェイトの注意が逸れたことを見逃すほどエクゼは甘くなかった。
 コンマ数秒後には彼のショットガンが火を噴いていた。

「warning!」

 レイジングハートが危険を知らせた。
 間を置かずして、自分の頭上から落ちてくる物体に気がついた。
 地球の重力に招き寄せられた岩石としか思えなかった。
 隕石にしては遅すぎた。
 石でもなければ岩でもない物体のでこぼこしたの底は逆円錐形を模っていた。
 大気の擦過によって赤銅色に染まることもなく蒸発現象すら起きない。
 レイジングハートが緊急事態と判断し、防御魔法を展開していた。
 とっさに飛び退こうとするなのは。
 かわした、と確信したとき落石の壁面から青い腕が伸びていた。
 魔力を伴っていない腕。すれ違う瞬間、なのはの防護服の襟をつかんでいた。
 地面に向かって引きずり込まれる。
 抗えば首に全荷重が集中し、頸骨を粉砕されてしまうだろう。彼女はなすがままに落下するしかなかった。

「なっ――」

 アリスの槍を弾いたフェイトは、なのはが地面に吸い込まれていくのを目撃した。
 だが、足を止めるわけにはいかなかった。正面から散弾が迫っていた。
 バルディッシュを握りしめ、身体を前に倒して散弾の下に潜り込むように直進。
 急激に推力を増幅したため、身体への負荷が激増。それでも加速を止めない。瞬きすら許されない。
 進行方向を維持したまま横方向にも推力を加える。
 螺旋を描くバレルロール。
 散弾が遙か彼方へ飛び去っていったが、フェイトの瞳にはエクゼしか映りこんでいない。

「バルディッシュ!」

 加速し、そのままバルディッシュを振りかざす。

「Haken Slash」

 デバイスが金色の魔力光を帯びて、刃にバリア貫通能力が付加される。
 傀儡兵の装甲を切断するには十分な出力である。
 エクゼがとっさに後ろへ倒れみ、身をよじって回避を試みるが、フェイトの方が速い。
 気合いと共に振下ろされた刃先は、易々と防御壁を突き破りエクゼの右腕を切断する。
 断面から冷却用循環油が血のように飛び散り、フェイトの頬を打った。
 眼下にエクゼを見据え、止めを刺そうとする。斬撃を遮るアリスの砲撃。
 フェイトははエクゼを突き放すようにして避け、

「Haken Saber」

 三日月型の光刃を射出した。
 飛翔し、回転数を上げていくうちに円形状となった光刃は、砲撃路に拡散した魔力の残滓を引き裂きながらアリスへと加速する。
 フェイトは敵を撃破するために空を駆けた。




//



 小さな体が地面に叩きつけられた。
 最硬度の魔法壁が展開されたにもかかわらず、殺しきれなかった衝撃が内臓を震わせた。
 口中にたまった唾が一斉にはき出され、痛みに続いて吐き気がせり上がってきた。
 死ななかったのが不思議なくらいである。
 なのはが立ちあがると、眼前に青色の傀儡兵が立っていた。
 自分の体と変わらない大きさを持つ鉈を握っていた。

「フラッシュインパクト!」

 反射で動いていた。傀儡兵《ヒバリ》はろくに魔力がのっていない打込みを盾で防いだが、すぐに距離を取られて反撃できなかった。

「クロノ君が話していたもう一体の傀儡兵!」

 なのはがレイジングハートを斜めに構えた。
 接近戦が不得意ななのはは距離を詰められる訳にはいかなかったのである。
 周囲に乱立する木々が目にはいった。障害物だらけの戦場である。

「わたしよりも小さいのに……でも」

 傀儡兵《ヒバリ》は呟くようにして起動トリガーを口にした。

「No hard feelings,《あなたに恨みはないけれど》rest in peace.《安らかに眠れ》」

 百発ものガイドシェルが呼応して動き出す。
 ガイドシェルは誘導操作可能な射撃魔法である。
 ディバインシューターに外見の似通った魔力光を伴った魔法弾なのだが小振りで、威力に劣る。
 その分、操作性に優れており術者によっては数十、数百発を同時に操ることが可能である。速度についても申し分ない。
 魔法弾が群れをなして十数本のリボンとなって円を縮めていく。
 木々の間を縫い、あるいは滞空し戦域を俯瞰していた弾丸が急降下してなのはを襲った。

「これがわたしのたった一つ」

 それだけ言い残して傀儡兵《ヒバリ》が後退した。なのはは闇に融け込む彼女を追うことができなかった。
 左右から迫っていた魔法弾がなのはの脇を通り過ぎ、傀儡兵《ヒバリ》が溶けこむ闇を埋めるようにして急旋回し、直線軌道に移る。
 正面から迫ってきた。光が強く、一瞬左右に振れたと思った瞬間、加速した。
 なのはは防御よりも回避を選んだ。
 正面より迫る魔法弾の影に、もうひとつの魔法があると感じたからである。
 何であるか青い光に目が行ってしまって窺い知ることができない。
 倒れ込むようにして斜め前方に転がった。
 魔法弾はなのはのちょうど真後ろにあった木の幹をかすめて通り過ぎた。
 もう一つの魔法は木にぶつかって止まった。
 なのはが振り向くと、月明かりに照らされた幹に鎖が巻き付いているのが見えた。
 相当締め付けが強いらしく鈍い音を立ててきしんでいた。木の悲鳴のように思えた。
 なのはの選択は正しかった。同時にぞっとした。
 心の空隙を見透かしたようにレイジングハートが声を発した。

「Protection」

 透いた桜色の壁が真上からの攻撃を弾いていた。
 魔法弾は追撃しようとせず、弾かれるままにどこかへ駆け去っていく。
 そして静寂に埋め尽くされた。気味が悪いほどに静かだった。
 上空ではフェイトと傀儡兵の高速戦闘が繰り広げられている。
 魔法射出に伴う轟音が、どこか遠くの出来事に思えた。
 気を取り直して敵の気配を探ろうとした、まさにその時。
 静寂を突き破る羽音。風を切り裂く数十発もの魔法弾《ガイドシェル》が視界を覆い尽くした。
 数発が突出する。
 大気を引き裂く耳障りな高音《ノイズ》。推進力に費やされた魔力が青い残光となって瞳に焼き付いた。

「よし、迎え撃つよ!」
「All right, flash move」

 高速で後退して少しでも弾幕から離れようとする。
 迎撃するための時間と距離を稼ぐ必要があった。
 着地すると同時にレイジングハートを弾幕に向け、先端に魔力を集中させた。
 四つの環状魔法陣がレイジングハートを取り巻くように生成され、それぞれが魔力の増幅、加速を行う。
 杖の周囲には帯状魔法陣が形成され、桜色のミッドチルダ語が所狭しと刻まれていた。
 身体を桜色の光が包み込み、必要とする魔法が展開される。

「ディバイン――」

 発射まで一秒を切った。
 足の遅いガイドシェル、つまりほとんどの魔法弾が見計らったかのように二つに割れて、なのはの両脇をから遠ざかっていく。
 残った数発がさらに加速し、発振周波数が人間の可聴領域の上限近くにまで達していた。

「バスタ――!」

 発射、しかし外した。膨大な魔力の奔流が流れ去っただけだった。
 すぐに帯状魔法陣が放出量をしぼっていく。桜色の光が細くなっていった。
 魔法弾がなのはの顔の横を掠めていった。始めから当てるつもりがなかったのである。
 右から物音が迫り来る。人間ではありえない大きな足音。続いて人間の咆哮。

「It comes right hand」

 木々の間より青い傀儡兵が姿を現わした。
 魔力反応が微弱だったために、なのはの反応が遅れた。
 傀儡兵《ヒバリ》は何のためらいなく、先端がくの字に曲がった肉厚な剣を振下ろした。見た目に反して魔力がほとんどこめられていない、ただの物理攻撃だった。
 なのはは魔力の収束を終えたレイジングハートを抱えると、防御魔法が自動発動して剣を弾いた。
 そのとき、傀儡兵《ヒバリ》から舌打ちと一緒に荒い息遣いが漏れた。

「くそ、とっくに底か」

 巨体の重量を剣先に乗せて踏み込み、二度目の斬撃を放った。
 が、桜色の光をたわませただけで、攻撃を跳ね返された勢いで姿勢を崩してしまった。
 なのはは距離を取るべく後ろへ高速移動を行った。
 これに応じて傀儡兵の左手がなのはの動きを追い、腕の装甲に隠れていた砲口をのぞかせた。
 使い捨ての鋼殻魔法弾《フルメタルジャケット》が装填され、撃鉄が底部を叩く。
 推進用圧搾魔力が爆発。白い旋条痕を残しながら目標《なのは》へと驀進《ばくしん》する。
 同時に計測装置が作動し性能測定を開始。
 魔法壁に弾丸が突き刺った。
 そのまま壁の弾性とせめぎ合った結果、鋼殻のほとんどを削り取られながらも貫通したが、なのはを傷つけるには至らない。
 続けて二射。当てることができず射撃をやめたものの、

「さっすが、軍用」

 弾丸の性能に感心した傀儡兵《ヒバリ》がヒュルリ、と口笛を吹いてみせる。

「人?」

 なのはは木陰に身を隠しながら、ヒバリの声を聞いた。
 疑問を確かめるべく、恐る恐る木々から顔を出す。
 傀儡兵《ヒバリ》の姿は無く、地響きに似た足音が鼓膜を震わせたに過ぎない。
 音は右へ、右へ、と遠ざかって消えた。
 そしてなのはが顔を戻した――――その時。

「Caution!」
「え?」

 レイジングハートの警告。眼前にはおびただしい数の青い光球が浮かんでいた。
 光球の一つ一つが怪しく煌めき、なのはを見つめている。
 レイジングハートを強く握りしめ、囁くように、口を開いた。
 意図を解したレイジングハートが高速移動魔法を展開。障害物が多すぎて、最高速へ至ることができない。
 雄々しく猛った叫びに促されて、光球が一斉に動きだした。

 まさしく集中砲火。

 一つ一つの威力は小さくとも、間をおかずして襲い掛るガイドシェルは脅威となっていた。
 加えて、何時先程のような攻撃をするかも知れない。
 なのはが不安を顔に出した時、前方から強大な魔力を感知し、横からは茂みから徐々に大きくなっていく耳障りな音が聞えてきた。
 傀儡兵の、人間よりも遙かに重い足音がなのはの許へ近づいてくる。
 熱さを感じて、なのはが右へ飛び退いた。
 直前までいた場所をガイドシェルが通り過ぎ、顔を上げた時には木々に埋もれて見えなくなっていた。
 他の魔法弾は彼女の位置を把握しているのか、それとも位置を探っているのだろうか。
 不意に茂みから大きな物音がする。

「いかせちゃだめ! つかまえてッ」
「Chain-bind」

 前方から幼い声。抑揚のない合成音声。放たれたであろう鎖に意識が向いてしまう。
 が、黒い魔力光によって闇に融け込んでしまい。なのはの眼には映らなかった。
 この時、計七十発もの魔法弾が黒鎖に導かれるまま軌道を変えた。

「レイジングハート!」
「All right」

 飛行魔法を展開。有効時間は地を蹴る一瞬。出力を最大とし木々の間へ跳躍。
 なのはの動きに対応して黒鎖が緩やかな孤を描いて、なのはの足先を掠めたが絡みつかれるには至らない。
 そのまま着地――失敗して数メートルほど地面を転がる。
 二呼吸遅れて魔法弾がなのはを強襲した。

「Protection」

 オートガードが起動する。弾丸を何度弾いても執拗に向かってくる。
 前、後、左、上。右方向を除いて魔法弾が複雑に飛び交っていた。
 なのはを捕捉しては追いかけ回し木々の中に消えてしまう。
 砲火の中を駆け抜けようとは考えなかった。
 一発一発のガイドシェルは脅威ではないが、足止めにはなる。
 その隙に黒鎖に絡め取られるような事態になれば集中砲火を浴びることになり、ただでは済まされない。

「It comes」

 ガイドシェルとは異なる、一定のリズムを刻んだ風切り音が聞えてくる。
 視野の左上に縦回転する円形状の光刃が飛んでいた。
 高速機動の魔法弾に目を慣らされたなのはにとって、非常に緩慢な動きに思えた。
 上を見る。数発の魔法弾が頭上を通過したが、目立った障害物はない。
 靴に生えた羽が小刻みに震え、風が巻いて彼女の身体を浮かせる。

「上に! レイジングハート」
「Flash move」

 フライアーフィンに魔力を追加して上空へ出ようと試みる――――が、

「ライプニッツ」
「Ok. Chain-bind XVI」

 傍から声が聞え、すぐに消えた。
 なのはが下を見る余裕は無い。
 十六本の黒鎖が頭上に出現し、行く先を遮った。
 動きが止まる。張りめぐらされた黒鎖、その向こう。
 滞空していた三十発の魔法弾が一つに固まって降り注ぎ、宙にあるなのはを打ち落とした。
 地面に衝突する寸前、姿勢制御に成功し攻撃が少ない場所へと退いていた。
 なのはは右へ、右へと動きながら傀儡兵《ヒバリ》の姿を探した。敵を見つけられなければ攻撃のしようが無かった。
 やりにくい。決して恐れるべき相手ではないのだが、戦い方にもどかしさを感じていた。
 詠唱しようと息を吸った瞬間にガイドシェルの苛烈な攻撃にさらされる。
 敵は得意とする砲撃魔法の使用を許そうとはしなかった。
 上空での戦いはフェイトが圧倒していたのだが、決定打に欠いていた。
 傀儡兵が戦闘時間を引き延ばしている、そんな感じすらしていたのである。
 左から青白い幽魂。魔法弾が噛みついてきた。
 やはり右へ避ける。
 右に――――

「また右に!?」

 なのはは自分が同じ方向にしか動いていないことに気がついた。
 意識して動いていたわけではない。
 右方向のみ攻撃が無いだけで、それ以外からは障害物を利用した執拗な攻撃が繰り返されていた。
 つまり、あらかじめ退路を設定されていたのである。
 時折足音が聞えてくる辺り、相手が動いているのは間違いない。
 複雑に動き回る戦場で誘導弾を制御することの難しさは、なのは自身がよく知っていた。
 しかし、敵の進路がわかっていたら?
 遙かに楽な制御ができる。攻撃のタイミングさえ気をつければいいのだから。
 そのうちに林道の一つに出た。
 一.五車線道路で、五十メートルほどまっすぐのびている。街灯はなく月明かりが頼りだった。
 道の奥には幽明が一つ。足音が一つ。
 再び傀儡兵《ヒバリ》が姿を現わした。その体には、ほとんど魔力を感じられなかった。
 巨躯を動かすだけでやっとの感じである。
 ただ、腕の周囲に浮かぶ環状魔法陣の青白い光が、人魂のように異様な輝きを放っていた。
 魔法が構築される。
 ヒバリのただでさえ少ない魔力はとうに限界を超えていた。
 全身の力が抜けていく。虚脱感に襲われながらガイドシェルの制御を手放していた。
 傀儡兵《ヒバリ》の傍らから白い文字がにじみ出てきた。
 そのうちにヒト形に象られた黒い紙が宙に浮かび、三角形を描く黒の環状魔法陣が現れた。
 突風によって紙が空へ巻き上げられ、中からジルが降り立った。
 なのはが自分を捉えたことに気づきながら魔法杖《ライプニッツ》を天高く掲げ、声高に叫んだ。

「血脈に刻まれし我がシン、彼の者が放てし獣を喰らい己が血肉と化す」
「Translatlation complete.《構成変換完了》Guided shell, online」
「闇、冥夜に浮かびし灯火を消し去ってしまえ!」
「Go!」

 幼い体から出たとは信じられぬ大音声。
 遠くへ放った糸を手繰るように指を折ると、なのはの背後で青色の灯火が猛り狂った。
 これを合図にして地面を蹴る傀儡兵《ヒバリ》。
 背部の補助推進器から拍手に似た破裂音が三度、鼓膜を叩く。
 一瞬だけ背後に気を取られたなのはの目前に迫り、機械の腕を突き出す。
 青と桜色の魔力光がせめぎ合った。
 なのはのバリア出力を以てすればこの程度の攻撃にびくともしないはずである。
 事実は違った。徐々にではあるが何重にも編まれた魔法の壁を突き破ろうとしている。
 傀儡兵《ヒバリ》の、機械の腕が強固な壁を貫こうとしている。
 対象に強制割り込みをかけるバリアブレイクとは違い、展開した魔法自体が中和されていった。
 まるで皮を一枚ずつ削いでいくように。
 思考する余裕はない。なのはは賭けに出た。
 生成プログラムそのものが侵される前にディバインバスターを仕掛けるというものである。
 この瞬間、なのはは魔法の構築だけに集中し、一切の雑念を意識外へ追いやっていた。

 ……三、二、一、

「Stand by ready」

 準備完了。

「撃ち抜いて!」
「Devine buster」
「だめだ、避――――――」

 バリアの完全無効化と同時に膨大な魔力の奔流がヒバリを呑み込んだ。
 ヒバリとの距離は僅か一メートルに過ぎない。
 とっさに見せた回避行動はほぼ無意味であり、この距離では厚い装甲すら紙同然だった。
 既に抗う力を使い切っていた。
 それでもなお、意思とは関係なく計器群は動き、記録し続ける。
 全身を打ち貫く激しい衝撃に、ヒバリの意識が、途絶えた。






備考





ガイドシェル(guided shell)
使用者:ヒバリ・F・ガトリング

複数弾の同時操作を前提としているため、操作性が抜群に優れており、緻密な制御が可能で加速性に富んでいる。
しかし威力に劣るため、数発程度では防護服を破壊することができない。
徹底した最適化により弾丸生成における魔力消費が極めて微少である。
また一度放出したガイドシェルを他の魔導師に委ねることができるので、複数人で操作している場合がある。

ヒバリが設定した起動トリガーは
『安らかに眠れ《rest in peace》』


チェーンバインド XVI(chain-bind XVI)
使用者:ジル・オートマン

チェーンバインドを十六本同時に射出する魔法。


鋼殻魔法弾(full metal jacket)
使用者:ヒバリ・F・ガトリング

軍事用に開発された使い捨ての魔法弾。性能を引き出すためには、若干ながら使用者の魔力を必要とする。

ただし、この鋼殻魔法弾は本局の監視下にある、いかなる軍事・警察組織及び、敵対組織も保有していない。











今回のサブタイトルであるskirmishは小競り合い、短い戦いを意味します。
ちなみに前回は緒戦の意味をこめて、beginningとしました。

闇の書事件を経たフェイト相手に傀儡兵二体では相手になりません。そんなもんです。
その反面、なのはの苦戦振りが目立ちます。
ヒバリが鬱陶しい戦い方をしていますが、正面から戦えば一撃でお終い。やっぱりそんなもんです。

次回も楽しみにして頂けたら幸いです。


二〇〇六年七月二一日 流鳴

拍手[0回]

PR
Name
Title
Text Color
URL
Comment
Password
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback URL
Powered by ニンジャブログ  Designed by ピンキー・ローン・ピッグ
忍者ブログ / [PR]